江戸川乱歩と並ぶ推理小説作家横溝正史による金田一耕助、岡山編最後の事件
実は既に金田一東京編最後の事件「病院坂の首縊りの家」は執筆されており、
これが横溝先生最後の作品としても知られています
それでまあコレは推理モノだけに限定された話ではありませんが
後期作品なれば質の低下に対しての批評は多くなる傾向があり
横溝先生もまたそのドツボに嵌ったパターンで
特に仮面舞踏会からの冗長な構成が見られます
その対策をしたのがミステリーの女王アガサクリスティで
全盛期の頃に書き上げた原稿を金庫に閉まって死後に出版していました
(ポアロ「カーテン」マープル「スリーピング・マーダー」)
しかし「病院坂」にしろ、この「悪霊島」にも言われてますが
ミステリ観点から見れば凡作であれど、
ストーリーに関しては概ね高評価を得た稀有な作品であります
ソレは長年培ってきた土着色の濃い作風を重点的に描いていたのが功を為し、
本作は金田一の岡山編の良き相棒として知られる磯川警部の総決算とも云える物語です!
さて金田一耕助の事件は二つの傾向があって
・田舎といった封建的な風習の残る一族による惨劇(八つ墓村・犬神家の一族)
・都会を舞台にしたエログロを主体にした猟奇的犯罪(三つ首塔・幽霊男)
と他に児童小説モノの3つに分類されます
しかし悪霊島は題名と舞台からして獄門島の兄弟作という立ち位置として
劇中でも語られますが、やはり内容的にエログロを主体にした部分も見られます
云わば上記のハイブリットととも言えますが…じゃあ内容の方に言ってみましょう
瀬戸内海に浮かぶ刑部島にて島開発を計画する島出身の億万長者越後竜平の依頼による
人探しを始めるのだが…
探していた男は海から引き起こされ瀕死の重傷を負いながらもテープに
「あの島には悪霊が…腰の引っ付いた双子…鵺の無く夜は気をつけろ…」
とダイイングメッセージを残す…
磯川警部にてとある老婆からの罪の告白を書いた手紙を受け取るも既に老婆も絞殺されていた…
と序盤からいきなり二人も殺されて泣く泣く刑部島に乗り込む探偵と警部w
蒸発した人間を探す者達と双子の姉妹、巴御寮人という得体の知れない女性、
刑部大膳と刑部守衛の確執、越後竜平のライバルにして巴と大膳の使用人吉太郎、
そして謎の若者三津木五郎…
第三の殺人⇒黄金の矢が刺さり死亡した刑部守衛
第四の殺人⇒殺されて後に野犬に食い荒らされた双子の姉、片帆
と次々と惨劇が引き起こされる…
事件の真相は巴御寮人が全ての元凶であった!
シャム双生児を出産した後に発狂してその赤ん坊二人を殺してしまったのだ
その後も精神分裂を引き起こす巴は次々に男達を殺害!
実はこの島で蒸発し神隠しにあった男達は隠し洞窟の中で
赤ん坊と共に装飾をなされ飾られていた
殺人事件の後始末をしていたのが吉太郎であった!
つまり一連の事件は共犯によって引き起こされたモノ
吉太郎は死に、結局は巴御寮人はこの島にて神隠しに遭う!
金田一は巴を殺し隠したのは竜平ではないか?と動機を説明するものの
確たる証拠も無いまま事件は闇の中に隠れてしまった…
謎の若者五郎の正体は磯川警部の息子!!!
いやあ、コレには驚きますw
老婆の家から逃げ出したり、竜平にお父さんと呼び、守衛の遺体に鏃を捻じ込んだり、
と幾つかミスリードを仕掛けていたので完全にしてやられた感じですw
実は最初の手紙は抜けていて物語後半にて補充されて真相が明らかにされます
どうやら老婆はとある事情で赤子を奪って養子に出し、
その後、例の赤子であった五郎が真相を聞き出した際、
あろうことか巴と竜平の子供だと嘘を付くとんでもない婆さんwww
これによって磯川親子は悪霊島殺人事件に巻き込まれる不運に見舞われます…
しかし最後には和解、この時の磯川警部「ああそう」と言う素っ気無さが笑いを誘いますw
鵺、神隠し、シャム双生児と色々なキーワードを捻じ込み、
そこに+αとして磯川警部にスポットを当てた本作品は
決して出来の良い作品とは言い難いですが…
それでも読ませるんですよねえ、僕の感想文なんかよりもずっと…w
映像化は映画1本、TV2本の計三本制作されており、
原作では人畜無害だった刑部大膳が実は黒幕だったという改変があります
妙にしっくりくるのは何でだろうかw
やっぱ獄門島と比較対象にされがちな本作ですが相当差別化が図られてますね…
俳句殺人の見立ての代わりに用意したのが準レギュラーの親子愛とは…
下手な叙述トリックより反則です!(爆)
で、実を言うと僕、獄門島より悪霊島の方が大好きですwww
そういう評価もあっていいと思う今日この頃 でわでわ。。ノシ