ハンインチェ(韓英傑)無双、シュウイン(薄幸ヒロイン)英雄譚なこの一本!
(今は無き-みろくの館-レビュー風…)
それでは最後の「激怒の鉄拳」をレビュー!
前者は抗日アクションで、後二者は犯罪アクションというジャンル分けになっております。
流石ににブルースリー主演の抗日映画「ドラゴン怒りの鉄拳」という"古典的名作"と比べると
数段見劣りしますけど、
本作はキラリと光る"一見価値有な佳作"に仕上がっており、
間違いなく倉田さんの代表作の一つとして数えられるモノと自信持って言える、
そんな作品ではあります!
すいません、コレ数か月前に書いたモノを公開してるので論調が微妙に変なのでご了承下さいorz
コレも得利影業作品ですね、女ドラゴンことタン・パオユンとの共演作!
姉妹作品ってやつかな?
序盤、灰色に染まった雲空の中、
一人の寂れた老人が荷物を持ちながら半ば屍人のようにフラフラと歩く。
そんな老人を通り過ぎる一人の若者、本作の主人公シャオホワ(アランタン)。
さっきの覇気の全く無い老人もそうだが、町全体が活気が無く人手が極端に少ない事に疑念を抱く。
彼は海外留学から帰国し故郷の家に戻ってきたのだ。
この数年に何が起こったのか!?廃墟同然となった自分の家にいた高齢の知人に訳を聞く主人公。
実は主人公の父が旧日本軍に唆され、金鉱山の採掘で謎の消息を経ち、
母は父の安否を思い、その心労が祟って亡くなったのだと!
その後、例の鉱山にて脱走者の二人が町まで逃げ出す。曲がり角で主人公とぶつかる。
脱走者達は謝罪するものの、彼が鉱山の場所を問い質すと慌てて逃げ出す二人組。
追跡していた旧日本軍と取り巻きの中国ギャングが主人公に難癖を付け襲い掛かってきた!
敵と乱闘する所でタイトルに原題「怒髪衝冠」とバーンと表示されて、
OPと共にアクションを展開する個人的には嬉しいお決まりパターンな訳ですが、
まあアクションはややモッサリとしていて凡庸・単調的であり、
殺陣の評価としては[ジミーウォング映画<本作<初代仮面ライダー]という図式が頭に過りました
それでも悪漢を蹴散らす様はさすがにスカッとしますけども。
ちなみに悪漢を倒すと何と脱走者二人組は主人公と知り合いだったみたいで、
御都合主義ですが、当時70年代香港台湾映画の脚本は盗作問題が勃発しており、
内容を練り直す余裕がなかったらしいです。
無論低予算なので短期間撮影が基本であり、
この手の功夫映画は通称「一週間映画」とも言われていました。
日本で例えるならヤクザモノのVシネマがソレに当ります。
とある酒屋で話をする主人公一行。
そこで「タングステン」とかいう難しい単語が不意打ち気味に現れて、
あたふたする自分ではありましたが、
どうやらそれは砲弾の材料になる火薬の一種であり、
実は強制労働されていた場所は金鉱山ではなくタングステン鉱山で、
旧日本軍は不正採掘していたのです。
ていうか何で偽装する必要性があったのか?ここら辺が今一つ理解出来なかったんですけど、
まあ多分、戦前の中国で支配していたのは何も日本国だけではなく
欧米列強もまた搾取し利益を確保していた存在な訳で、
それで各拠点に租界が点在していました。
時代設定はハッキリとはしていませんが
日中戦争或いは第二次世界大戦での出来事だとするならば
欧米諸国から監視・横槍されない為にも、
そういう偽装工作は必要不可欠ではあったのかなあと(;^^)
地政学や歴史認識に自信がありませんので何とも言えませんが。
と邪推的考察しましたが、単純に考えて中国軍の存在を懸念しての行動なんでしょう。
ただ、本作の中国労働者の描写は完全支配されまくりで反撃の余地なさそうなのが…(苦笑)
ていうか中国労働者の多さからして、エキストラが豪華すぎな本作。
70年代台湾映画の特徴でもあるんですよねぇ。
この積み重ねが70年代のB級カンフー映画から
80年代の台湾ニューシネマに繋がっていると観れば感慨深いモノがあります。
脱線修正。このあと主人公は鉱山に乗り込みレジスタンスを目論見、
休憩時間仲間を集ったりしますが、呆気なくばれて速攻鞭打リンチの刑に処されます。
とそこで倉田さんの妹さん・芸子(タンパオユン)は颯爽と現れ主人公を救います。
妹さんは女医でもあり数ある労働者の命を救った心優しい持ち主。
って、倉田さんの説明まだやったw
倉田さんは中村という鉱山の現場指揮をやっており酷い事もやってましたが、
脱走者も同じ様に多かったらしく、
それに加え妹の手助けに関して邪魔を一切しなかったりと、
その真意は如何にという思わせぶりなキャラクターを演じておりますw
ただ、その思わせぶりが納期の遅れを生み、
それが仇となって日本から井中(韓英傑)が派遣されて助手に降格するハメになりますが…。
井中の登場により中村こと倉田さんは中国労働者達の取り締まりを強化せざるおえなくなり、元々取り巻きのガラが悪かった為に労働環境が悪化、
クーデターを実行しようとした主人公を病院送りにします。
そして主人公はこの映画のもう一人のヒロインであるシューインと出会います。
このシューインは芸子を日本人である事を知りつつも尊敬しており、
それで主人公に今置かれている現状の全てを暴露します。
しかしそこに井中が主人公を尋問しようと病院に訪れ、
シューインは主人公を何と死体保管室に誘導して
ホルマリンプールにある死体達に擬態しろと強要w
ていうかここにある死体、どうみても本物なんだよなあ…
黒い太陽731とかの映画でも少年の死体解剖の際本物使用していましたが…
さすが中華圏である(爆)
まるでスカトロモノのAV女優みたいに嫌々ながら死体に扮する主人公w
そこに井中と彼を誘導していたシューインが登場、
苦し紛れに時間稼ぎをして何とか誤魔化せたものの
井中は目的をシューインを強姦する事に転換!何と死体保管室にて行為に及ぶ!(ヒエー
全てが終わった後に「なぜ助けてくれなかったの!?」と叫ぶシューイン。
しかしそこに主人公はすでに逃走しており同じクーデター仲間の元に向かっていた。
その事を知ったシューインはただただ号泣するしか無かった…
さて最初に取り上げた薄幸美女シューインが颯爽に登場。
とあるラノベの上条さんとは比べ物にならないほどの不幸を背負ってしまった彼女ですが
後半にてさらなる活躍(?)を見せるのですが、まあ後程…
脚本にしろ予算的な問題もあるんですが
そこをかなり暴力残酷描写を挿入する事により
飽きさせない工夫を凝らしているのは分かるけどやっぱりえぐいなあ…
ここら変はまあしょうがないかなと最初から分かりきっていたのですが、
さてさて、そこから自分のせいでレイポーされた事を気付いていない主人公一派は
色々と作戦を練り始めます。
しかし井中も最終目標として、
全ての資源強奪と証拠隠滅を旨に配送計画と全労働者爆殺計画を実行に移そうとします。
そんな中、井中とその仲間達とは脱線して悪酔状態で会議に参加した倉田さん。
明らかに浮きまくってますw
それは先日の夜にて、酒に飲みつつとある回想に浸って、
それによってスランプに陥っていたからです
ここで明らかになるのは倉田さんは実は日中混血者である事を隠しており、
そして主人公に日中情勢からして妹と別れてくれないかと懇願しそれで失恋させてしまった事、
自分の立場上、中国労働者を酷使してしまってる事に自己嫌悪に陥り、
半ば再起不能状態に陥ります。それを良い事に井中は好き勝手暴れて妹や主人公と闘う始末。
倉田さんは何とか正気を取り戻して井中らと参戦する。
しかし敵方は組織力を生かして中国人労働者を手当たり次第拉致監禁する暴挙にでます。
洞窟の牢屋に監禁された労働者を助ける為に主人公とシューインはただちに現場に向かう。
ここからがこの作品の真骨頂ともいうべきで、シューインは何と
仕掛けられた爆弾を持って身投げして自爆するというトンデモシーンが炸裂します。
これに火が点いた主人公軍団は妹と倉田さんも仲間に入れ敵と最終決戦に挑みます。
ここらの乱戦は見物で二転三転の攻防を見せ最後は主人公と妹さんが井中を討ち取ります。
戦いで致命傷を負った倉田さんは、
主人公に自分の出自を明かし妹を託すと静かに息を引き取りました…
低予算功夫映画に興味無い人には多少きつい部分が多々あるのは認める所ですが
+αを感じさせる脚本は評価すべき点でもあり、
見所は結構多くて「井中」の横暴さや「シューイン」の勇敢さ等が個人的に印象に残りました。
シューインの薄幸さはマジで泣けてきます。
本当もうちょっとどうにか出来ないかと思いましたが
主要人物が次々と死ぬのは功夫映画黎明期のお約束なので我慢するしかないですね。
それとハンインチェ演じる井中の悪役ぶりですね。
彼はドラゴン危機一髪のラスボスを演じている香港の武術指導者の一人で、
香港で初めてトランポリンを導入したり、サモハンを弟子に取ったりなど隠れた大物w
その貫禄さは非道の悪党を演じている本作でも十二分に発揮しており
特に倉田さんとは力強い殺陣を披露してくれます。
それとこの作品で一番凄いのが抗日映画で準主役を演じた倉田さんの存在です。
当時の台湾は反日感情が根強い時代でこの快挙は凄いと思います。
数年前、中国の抗日ドラマで善側の旧日本軍兵を日本人俳優が演じ
それで本国では物議を醸しだしたという事例がありましたが、
倉田さんはそれを数十年前にやってのけたのです。やっぱり倉田さんは偉大です!
三部作レビューこれにて終了。。ノシ