幽霊男とは対極的なお話、それも歌舞伎の舞台演劇で引き起こされた惨劇です
金田一少年ではオペラ座の怪人が有名ですが…
此方は陰気な雰囲気が漂う劇場にて17年前に失踪した人物がいて、
それが題名にもなった幽霊座の異名をもつ所以であります。
今回はこの作品をレビューしようかと思います!
しかし中編なのに3人死んでるのは…流石orz
稲妻座という場所は色々と噂の絶えない場所である
金田一は人気俳優にして謎の失踪者鶴之助とは旧知の中であった
依頼を受ける金田一はソコで夏芝居の鯉つかみによる例の蒸発事件を聞かされる
どうやら鯉つかみの裏方として下段に待機してた者達が眠らされてた事から
鶴之助本人、もしくはそれ以外によるモノかは確かのようだ…
この鯉つかみは水芸、云わば手品の一種で
舞台の水船に乗り込み、奈落を抜けて早変わりで花道に上がる演芸
鶴之助が消えた17年後、潰れ掛けの稲妻座にて起死回生の一手として興行を施す支配人
楽屋にて乗り込んだはいいが金田一は、注目株雷蔵が倒れ、その後の代役紫虹が殺される!
どうやら、ニコチンとストリキニーネの2種類の毒物を使用して凶行に及んだようだ。
しかし事件は終わらずに、第二の殺人が勃発!! 殺された彼はダイイングメッセージを残す
はたして犯人は誰なのか? 鶴之助本人の行方は如何に?
密室工作の亜種である人体消失と本格ミステリの定番である毒殺工作を用いた意欲作!!!
その為か、本作の評価も結構高めなのだが…作者本人は不満がある様子
というのも、この鶴之助が蒸発した要因、所謂動機によるモノが大きいのです…
蒸発手段も極単純で睡眠薬を盛って一人雲隠れ、というトリックとはいえないモノ、
しかしコレこそが今回の幽霊座連続殺人事件と深い繋がりを秘めていた!
鶴之助は自分の息子が息子を殺害するのを目撃、その後も弟子を殺害され妻も亡くなった!!!
それも紫虹、第一の殺人の犠牲者 鶴之助はソレに絶望して消息を絶ったのである…
今回の事件は紫虹と変装した母親との共謀によるモノ、
鯉つかみの仕掛けのゴムまりに毒針を母親が仕込むのだが、
思い違いから紫虹に注入され、雷蔵は被害者に偽装する為の毒入りチョコを服用してしまった!
これだけならまだしも第二の犠牲者は母親が男装していたのを知り、
それをダイイングメッセージとして残して金田一はその謎を解き明かす
逆上した紫虹母は襲い掛かるものの、事故に巻き込まれて死亡
金田一は幽霊座を閉鎖して別の場所で興行を再開するべきだとアドバイスするのであった…
金田一少年か名探偵コナンならば鯉つかみを使った複雑なカラクリ工作を披露するのであるが、
一連の家族構成と動機伏線を張り巡らせて本格ミステリに作り上げる手腕は、
現代の糸針や機械、化学現象を応用したトリックが目立つ昨今の推理小説では不可能かとw
この単純工作にして動機の複雑性をも巧みに組み合わせる作風は、
「女王蜂」「悪魔の手毬唄」「悪魔が来りて笛を吹く」という中期傑作に見られる傾向であり、
そのストーリーの妙は「悪霊島」「病院坂の首縊りの家」完結2編にも✜に働いてる感じはあります
でも作者は多分、もう少しこの鯉つかみの掘り下げを行いたかったのもあるでしょう
図面イラストが小説内にて記載されてましたから、丁寧にねw
けど断念したか、この後に幽霊男を執筆 こちらは実在の狂人を描く事で差別化してます
それにこの中短編小説、他にも「鴉(岡山編)」「トランプ台上の首」の傑作短編があり、
後々に紹介したいかと思います。。ノシ
この本、中古で見つけたのに古紙に出してしまったのは今でも後悔していますorz